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「鶏鳴き山」
さとうなつみ作
とりなき山(とりなきやま)
大嶺 白倉・夏秋
昔、白倉(しらくら)と夏秋(なつあき)のさかいは決まっていませんでした、そこで人々は、
「あの谷までをさかいにしよう。」
「いやいや、それでは、わしらの村がそんをする。」
「それじゃあ、白倉川の大岩のとこではどうじゃ。」
「それじゃあ、わしらの村がそんじゃ。」
と、なかなか決まりませんでした。
何かよい考えはないかと、みんなで考えた結果、次のような方法で決めることになりました。
それは、白倉と夏秋の村の代表者が、一番どり※1を合図に、向かい合って家を出て、出合ったところを村のさかいにするというものでした。
その結果、さかいは決まったのですが、そんをした方はくやしくてな
りません。
「一番どりがしっかり鳴かなかったから出るのがおくれた。」
と、とりのせいにして、にわとりをつかまえ、首だけ出して生きうめに
してしまいました。
それからというもの、この山では、けが人がたえないので、人々は「く
せ山」とよんで、この山で働くのをきらうようになりました。
そして、山仕事をするときには、おはらい※2をしてから山へ入るようになりました。
※1 朝、一番はじめに鳴くにわとり
※2 わざわいやくるしみをおいはらうこと
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