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半心経(はんしんぎょう)

戸倉

 その昔、秋葉の山の中で小屋を作り、三人の男が働いていました。

 その中の一人は般若心経というお経を半分だけ覚えていて、いつも仕事をしながらその半分のお経をくりかえしとなえていました。

 ある時、雨がふり、何日も仕事ができない日が続きました。男たちは、小屋の中から空を見上げてため息をついていました。ところが、お経を知っている男は、あいかわらず小屋の中でお経ばかりとなえていました。

 すると、とつぜん、顔をすみまでまっ黒にぬったおかしなやつが小屋の入りロにあらわれて、いじ悪く、

「ヤーイ、半心経、半心経ヤーイ。」

と、大きな声ではやしたてました。

「このやろう。」

と、男は大変はらをたてて、いろりのもえつきたまきをつかむと、小屋の外へとびだして後を追いました。

しかし、まっ黒なやつはものすごく足が速く、走ってにげてしまいました。

 ちょうどその時、小屋のあたりにドドドドーと大きな音がしました。ふり返ってみると、後ろの山に大なぎが起きて、中にいた二人の男は、小屋といっしょにおしつぶされてしまいました、半心経を覚えていた男は、そのおかげで、命びろいをしたということです。

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