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山伏塚(やまぶしづか)
下平山
下平山には大沢の向こうに、先祖の名前をきざんだ石碑があります。
それはだいぶ昔のことでした。
一人の武士がてきに追われて、下平山までにげてきました。ちょうどその日は、呼石ではお日待ち※1をやっていました。そこににげこんだ武士は、これさいわいとにぎやかなわにもぐりこみ、追手※2が行きすぎるのを待っていました。
ようやく追いついた追手は、あたりをきょろきょろ見回しながら、
「さむらいが、このあたりに、にげてこなかったか。」
「どっちへ行ったか言え。」
と村の人たちに聞いて回りました。すると、みんなでお酒を飲んでいた村の人たちは、武士がとらえられてはかわいそうだと思い、
「あっちのほうじゃ。」
「いや、こっちににげたぞ。」
と言って、武士をかばいました。村の人がみんな別々の方向を指さすので、追手は武士がどっちへにげたのかさっぱり分からなくなりました。
そうこうしているうちに、武士は追手のすきを見つけて、山へにげていきました。
追手は、村の人たちが武士をかばったことに腹を立て、
「おまえたち、おぼえておれよ。」と言いながら村を後にしました。
そのためでしょうか。その後、村の人たちの間に目のやまいがはやり、長い間なやまされました。
村人たちは、これはきっとあの時の追っ手のうらみのせいだと考えて、先代の名前をきざんだ石碑をたてました。そして、目のやまいがなくなるように、お
がんだということです。そして、山伏にたのんでおはらいをしてもらい、そのおかげで目のやまいがおさまりました。
そのお礼に石碑の近くに塚をたてておがむようになったそうです。しかし、今ではいいつたえだけで、塚は残っていません。
※1祭りにそなえて、村中の人が集まり、一夜を明かすこと。
※2にげていくてきを追いかける人。
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