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白山神社ご神体※1のいわれ
(はくさんじんじゃのごしんたいのいわれ)

瀬尻

 遠い遠い、昔の話です。

 加賀の国(今の石川県の一部)から、加茂運太夫(かもうんだゆう)、式部太夫(しきぶだゆう)というなかのよい兄弟が、はるばる下里にやってくることになりました。神様をうやまう心があつく、遠く加賀白山※2へ六度もお参りしました。

七度目のお参りは二人とも歳をとっていたので、もうこれで最後のお参りと考えて、せめて信心※3の思い出にと、白山の鳥居※4にかけてあるしめなわでもいただきたいと白山の神官(しんかん)※5にお願いしました。

 神官は、

「りっぱな心がけじゃ。」

と申されて、鳥居のしめなわをつづら※6に入れてわたしました。よろこんだ二人は、つづらをせおって山を越え野を越え、帰りの旅を重ねました。

 はじめは軽々とせおったしめなわでしたが、日がたつにつれてだんだん重くなり、なんとなく別の物が入っているように感じてきました。たまらなくなった二人は、伊勢の国(今の三重県の一部)は山田の宿に着いたとき、とうとうつづらを開けてしまいました。

 開けてみると、白山の神官からいただいたしめなわはかげも形もなく、そこには光かがやくおかがみがずっしりと入っていました。

二人はびっくりしました。そして、そのかがみをつづらに入れたまま、旅をつづけることにしました。

 やがて家に帰り着いた二人は、このかがみを神様におまつりしました。その後二人はおそれ多いことと思い、そのかがみを今の白山神社にまつったともうします。信仰の厚いこの二人が、今の鬼石家の先祖であると伝えられています。

 

※1神社などで神としてまつる物。

※2石川県と岐阜県のさかいにある山。

※3神仏を信じる心。

※4神社の入り口の門。

※5神社で神様につかえる(せわをする)人。

※6つづらふじ、竹などであんだ着物を入れるかご。

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