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青木石の話(あおきいしのはなし)
瀬尻 大庭
大庭から上の方へ五百メートルぐらい登ったところに、青木石とよばれる石がありました。
この石が、遠くの場所から見えるようになると、大庭には、悪いことが起きるという言い伝えがありました。この石があるところの山の持ち主も、石のまわりのものには、さわらないようにしていました。
今から二百年ぐらい昔のことです。
とつ然、青木石の一部が欠け、ばらばらと落ち始めていました。
この様子を、下茶の余代夫(よよお)さん(岩本家の先祖)が、「うずか※1」(現在は石留さん)の家の庭から見つけ、びっくりしました。青木石がある下の方には、何げんも家があるのです。落ちてきたら、大変なことになります。
余代夫さんは、青木石がある場所と家のある場所の間を、じっと見ました。すると、青木石から三百メートルぐらい下のところに長岩とよばれる大きな岩があるのを見つけました。
とっさに余代夫さんは、
「止めておくれよ、長岩どのー。」
と、声をふりしぼってさけびました。
そのとき、いきおいよく落ちてきた青木石は、長岩にぶつかると、 一度止まったように見えました。
しかし、いきおいがついている青木石は、くだけながらまた落ちていきました。
それから、人の家にはぶつかることはありませんでしたが、平野さんの馬小屋をつぶすと、天竜川をめがけて落ちていきました。
その青木石のはへんは、今も国道の上の方に残っているそうです。
足留という名字や、大庭にある馬頭観世音像(ばとうかんぜおんぞう)※2は、青木石の話に関係するものだそうです。
※1屋号で、名字の代わりに使われる家のよび名
※2観音様の一つ。頭の上に馬の頭のかんむりをのせ、三つの顔と八本のうでを持つ。馬の病気や悪いことをふせいだり、旅の安全を守ったりするという。
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