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かあご岩とびんかき水
瀬尻 尾曲
尾曲を過ぎ、柿木沢を過ぎて釜沢へ行く途中に、かあご岩という大きな岩があります。
その昔、いくさにやぶれた一人の武士が、ここまでくれば、てきももう追ってくることはなかろうと、ひと休みしました。武士の目の前には大きな岩がありました。武士はその大きな岩の上に登り、かあご※1を開けて体を休ませました。
武士がこの岩の上で、かあごを開けてひと休みしたことから、この岩を「かあご岩」とよぶようになったと言われています。
また、そこをすぎて、杉・ひのきのなみ木をぐんぐん上っていくと、ちょっと平になったところがあります。昔そこには水がわいていました。いくさにやぶれてにげていた武士が、このわき水でびん(髪)のみだれをなおしていると、追手に見つけられてばっさりと切られてしまいました。
それ以来そこには、刀がまつられ、そのわき水も「びんかき水」と呼ばれたそうです。しかし、今ではその名前だけが残り、びんかき水も刀もありません。
※1長野県筑摩地方の方言。やまぎや竹で作った弁当箱。
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